琉球新報歴史小説・『安恒』を読む

安里が小野寺に言った。「ウンジュは東京にいたことがあるんだな?」

「はい。仙台の学校を出て、東京の内務省で働いていました」

「喜屋武親方に訊いてみたが、使節団で行くのと住むのとでは大違いだろうから、行ってみなければわからんと言われた」

久高が「あの喜屋武親方にお目にかかったのですか?」

たしか、喜屋武親方朝扶は、家扶として尚泰王に同行するはずだった。

家扶とは華族に仕える者で、昔なら家老だあろうな。・・・・・・

・・・・・。

「じゃあ、ワンは行くぞ」

糸洲がヒンプンのところまで送っていった。



写真:首里城内のシーシ加奈志(撮影・くまがい)